狩猟本能を刺激するフードパズルの効果と作り方

フードパズル

 

最近では猫を完全室内飼いすることが一般的になり、家の中でのみ生活する猫が増えました。交通事故や感染病のリスクを考えれば、愛猫の健康を守るために室内飼いを徹底することは非常に重要なことです。

 

しかしデメリット面もあります。室内飼育の猫の生活サイクルは、1日中寝て、時々毛繕いをして、与えられた食事を食べたらまた眠る、といった流れです。猫の睡眠時間がいくら長いと言っても、生涯このワンパターンの繰り返しではさすがに退屈です。運動不足は肥満や様々な病気の原因になり、ストレスが溜まることで粗相や凶暴化などの問題行動に繋がると言われています。

 

そこで話題になっているのが「フードパズル」、別名パズルフィーダーとも呼ばれるアイテムです。あまり耳馴染みがないかもしれませんが、分かりやすく言うと、猫が遊びながらエサを食べる給餌器です。単なるオモチャのようにも思えますが、ストレス解消や健康管理になることから、多くの飼い主が導入しています。

 

今回はフードパズルをテーマに、その効果や使い方、さらに自作する方法などをご紹介していきたいと思います。ひょっとしたら愛猫の問題行動がなくなるかもしれませんよ。

 

 

猫のQOLを高めるフードパズル

フードパズル

 

フードパズルを使うメリットとして、まず挙げられるのは、ゆっくり食べさせることができる点です。時間をかけて食べると満腹中枢が働き、満腹感を感じやすくなります。血糖値の急激な上昇を抑制したり、消化に使うエネルギー量が増えるなど、ダイエットに効果的なのです。キャットフードを吐きやすい猫にも最適です。

 

また頭を使って試行錯誤することが、猫にとって狩りの疑似体験にあたります。猫は狩りで獲物を捕る肉食のハンターです。困難な状況を乗り越えて食糧を得ることが狩猟本能を満たし、それが猫のストレスを軽減させます。

 

これらの効果については、アメリカの大学病院が30匹の猫を対象にフードパズルの効果について調査した結果、肥満気味だった猫にダイエット効果が見られたことで明らかになっています。最大で20%もの減量に成功し、この内容が猫専門の学術雑誌「Journal of Feline Medicine Surgery」に取りあげられました。

 

さらに年齢関係なく、どんな猫でも利用できるところもポイントです。とくに運動量が低下しやすいシニア猫や障害を持っている猫も、自分のペースでできるのでお勧めです。ほんのちょっとしたことですが猫の環境に変化を与えると、QOLの向上に大いに役立ってくれるのです。

 

 

最初のレクチャーが興味を持たせる要

初めてフードパズルを使用するとき、単に与えっぱなしになってはいけません。猫にとってフードパズルは異質な存在で、どう使うべきかも分かりません。興味を持ったとしても、すぐに飽きてしまう猫もいます。

 

最初は飼い主も一緒になって遊んであげることが大切です。中にオヤツを入れるところから見せて、どうやって出すのか実際にレクチャーしましょう。猫が上手く取り出せたら、思いきり褒めてあげます。ある程度モチベーションを上げることができれば、後は自分で遊び始めます。

 

興味を惹くために、空腹時を狙うと効果的です。お腹が空いていると一生懸命チャレンジします。置きエサの習慣がある場合は、これを機にやめてみましょう。留守中にフードパズルを設置していくのもいいですね。嗅覚に敏感な猫ですから、匂いの強いオヤツを使うのも有効です。

 

 

自作フードパズルで手軽にチャレンジ

色々なタイプのフードパズルが販売されていますが、じつは家にあるものでも手作りできます。簡単に作れるので、手先が器用でなくても大丈夫です。

 

最も手軽な方法は、紙コップを両面テープで固定するやり方です。コップの中は顔が入らないので、猫は手を使って取ろうとします。コップの直径を小さくすれば、その分難易度が高くなります。製氷皿や卵パックなど、小さな凹凸がある容器もフードパズル向きです。

 

ペットボトルやカプセルトイの容器などは、転がしながら遊ぶフードパズルに流用できます。オヤツが少しずつ出てくる大きさの穴を開けておきましょう。

 

空き箱に穴を開けて、モグラたたきのような見た目にするのも、猫の好奇心をくすぐります。ティッシュの箱くらいの大きさが使いやすいでしょう。穴は大きすぎず小さすぎず、猫の手がちょうど入るサイズが目安です。

 

 

フードパズルを使用するときの注意点

難易度が高すぎると、逆にストレスになることもあります。初めてフードパズルを使うときは、比較的簡単な仕掛けを選んだり、オヤツがすぐに取れるようにしておきましょう。

 

今まで使用していた食事用の器を、いきなりフードパズルに変更するのもいけません。最終的に普段のご飯もフードパズルで与えることができればベストですが、徐々に切り替えることが重要です。場合によっては猫が絶食状態になり、脂肪肝を発症させることも考えられます。

 

事故にも注意しなければなりません。飼い主が見守れる状況下で、安全を確保しながら使用してください。とくに自作のものは壊れやすく、割れた破片などを誤食する恐れもあるため、留守中に使わせるのは大変危険です。

 

構造が複雑にできているものは、洗浄が不十分になりがちです。雑菌繁殖のもととなるので細かい部分までしっかり洗い、完全に乾燥させてから使用してください。洗えないものは定期的に新しいものと取り替えましょう。

 

転がすタイプのフードパズルはオヤツの粉が散りやすく、掃除の回数が増えます。床がフローリングの部屋があれば主にそこで遊ばせるようにすれば、最小限の手間で済むでしょう。また小さいものだと家具の下に入り込んでしまうので、隙間を塞ぐなどの対策も必要です。

 

 

フードパズルは学習能力の高い猫にピッタリ

フードパズルは脳に刺激を与えるだけでなく、自分で手に入れるという過程を楽しむツールになります。最初のうちは上手く使えずに、飽きられてしまうこともあるでしょう。しかし猫の学習能力は非常に高く、飼い主がきちんと教えることで必ず使えるようになります。

 

毎日欠かすことなく目一杯遊んであげることが一番いいのでしょうが、なかなかそうもいきません。フードパズルの導入が猫のストレスの解消に役立つのなら、これは是非とも試しておきたいところです。日中は仕事で留守がちな家庭にもお勧めです。あなたの愛猫にもいかがですか?

 



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