「獣医師推奨」と普通のキャットフードの違う点

キャットフードの広告で、「獣医師推奨」や「獣医師監修」といった謳い文句をよく見かけます。動物病院でも扱っているものでいえば、ロイヤルカナンサイエンスダイエットプリスクリプション・ダイエットを販売しているヒルズ(Hill’s)が有名です。獣医師と言えば動物の専門家ですから、多くの飼い主が「何となく健康に良さそう」と思うはずです。

 

しかしそういったフードの中には、原材料に穀物やミールなどが使われているものがあります。猫の体に良くないとされる材料なのに、獣医師が薦めるとは一体どういうことなのでしょうか。戸惑わずにはいられません。

 

「獣医師推奨」と表示できる基準はあるのでしょうか?動物病院に置いているにも関わらず実は危険なフードだった、なんてことはあり得るのでしょうか?消費者には分かりにくい「獣医師推奨」の真相について、今回は迫ってみたいと思います。

 

 

そもそも獣医師はフードに疎い?

結論から先に言うと、「獣医師推奨」に基準は設けられていません。各メーカーが獣医師数名に対して、キャットフードの栄養成分やバランスのチェックを依頼し、確認を取ったことが「推奨」となります。調査結果の詳細について公表しているメーカーもあり、推奨していること自体に相違はないかもしれませんが、獣医師がペットフードに詳しいという見方には疑問が浮かびます。

 

獣医師は大学で動物の診療や栄養学などを専門的に学びますが、ペットフードについて勉強することはありません。フードメーカーが行う講義はあるかもしれませんが、医療がメインである以上そこまで深くは掘り下げないでしょう。さらに犬猫だけでなく、ウサギや鳥など様々な動物を診察しなければならず、フードにまで手が回らないことは安易に想像できます。

 

食事療法による栄養管理の指導は行っても、一般的に獣医師はフードの知識を持ち合わせていないことが充分に考えられます。病気に罹った猫を看病している飼い主の方が、よっぽどフードの内容に精通しているのではないでしょうか。

 

 

獣医師とメーカーの結びつき

注目すべきは「獣医師推奨」という言葉ではなく、キャットフードの中身です。獣医師が監修したり薦めているキャットフードが全て該当するわけではありませんが、とんでもない材料が使われているケースも実在します。ショッキングな内容を目にするかもしれませんが、原材料欄の食材名を上から順番に検索してみるのもお勧めです。

 

では何故そのようなキャットフードが「獣医師推奨」と銘打ち、動物病院で販売するのでしょう。一部では、メーカーが獣医師会に多額の寄付を行っている、といったことが囁かれていますが、真実については不明です。

 

しかしメーカーは独自に研究を行い、試験データから導き出した栄養バランスに基づいて開発しています。その結果は学会でも発表され、他のメーカーが参考にすることもあります。

 

メーカーの営業が実際に各病院を回り、キャットフードの試供品を配りながら説明することもあるでしょう。利権や癒着というよりも、これらの企業努力が獣医師との結びつきを強くしていると考えられます。

 

 

原材料でジャッジすること

原材料にこだわって製造された、「獣医師推奨」のキャットフードはたくさん存在します。個人的に猫を飼っていて、キャットフードの知識に明るい獣医師もいるでしょう。今回この記事を通じてお伝えしたかったことは、原材料を確かめることの大切さです。

 

キャットフードも種類が増えて、随分と細分化されました。キャットフードの価格や健康リスクなど、考慮しなければならない要素が多すぎて迷うこともあるでしょう。そんなときは、愛猫を人間の子供と思って考えてみてください。子供は自分で食べるものを選べません。親から与えられたものだけを食べて育ちます。

 

この視点を持っていれば、どういったキャットフードを食べさせたいかが見えてきます。自分で食べてみる、というのも1つの物差しになります。耳障りのよい言葉だけで判断せずに、何が使われているか自分の目でジャッジしてください。

 



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子猫は体重に200kcalをかけた数値、成猫は体重に80kcalをかけた数値が一日必要なエネルギー量です。それを元に2~3回に分けてキャットフードを与えるのがよいでしょう。各キャットフードの包装に100g当たりのカロリーが記載されているので、必ず参考にしてください。
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