肥満猫に適したキャットフードの選び方と食べ方で安全ダイエット

住宅事情による運動不足や不妊手術の普及などにより、室内飼いの猫の肥満は年々増加傾向にあります。猫は一度太ってしまうと元の体形に戻すのは容易ではありません。多くの飼い主が減量させるべく策を凝らすも、まったく痩せる気配のない愛猫に頭を悩ませているのではないでしょうか。

 

そんな世間のニーズに応えるべく、各メーカーが競い合うようにダイエットフードを発売するようになりました。数年前と比べてバラエティ豊かになりましたが、皆さん何を基準に選んでいますか?もし「ダイエット」や「減量」というワードや、カロリーの数値だけで判断しているなら危険です。ひょっとしたら、痩せない原因がそこに隠れているかもしれません!

 

 

猫だって肥満は万病の元になる

猫の適正体重は、種類や個体差により違いはあるものの一般的に3~5kgほどです。1歳時の体重が理想的とも言われています。この適正体重よりも20%以上超えていると肥満と判断されます。見た目としては、腰にくびれがなく、お腹が垂れ下がり、背中が広がっているのが特徴です。

 

脂肪肝

太り過ぎると病気のリスクが高くなるのは猫も同じです。一番多いのが脂肪肝で、肝臓に蓄積された脂肪でフォアグラ化し、肝機能が低下します。ほとんどの場合が無症状で、末期にならない限り分からないのが厄介なところです。その状態で数日食事をとらないと、体内の脂肪代謝異常により肝リピドーシスを発症し、短時間で死に至ることもあります。

 

心筋症

また心臓や血管への負担も大きくなり、とくに注意が必要なのは心筋症です。この病気は心臓内の血液が渋滞することで、血栓症を併発しやすくなります。後ろ足の付け根にある大動脈で発生することが多く、突然腰が抜けたような下半身の麻痺が特徴です。激しい痛みを伴うため、猫は悲鳴をあげながら暴れます。普段痛みを表に出さない猫がこのようになるのですから、その痛みは想像を絶するものでしょう。

 

他にも血中の糖濃度が高くなる糖尿病、関節炎、皮膚病、尿道疾患など、合併症を含めるとキリがありません。たしかに丸々と太った猫は愛らしいものですが、肥満は病気です。愛猫の寿命を飼い主自らの手で早めているかもしれないのです。

 

 

「ダイエット」の文字より栄養素で選ぶ

猫のダイエットは食事療法がメインになります。そのためカロリー計算は必須です。健康な成猫であれば体重1kgに対して70~80kcalで割り出しますが、肥満猫は40kcalで計算しましょう。与える回数は3~4回に分けて、脂肪になりやすいドカ食いをやめさせます。したがって計算式は下記のようになります。

 

(体重×40kcal)÷回数=1回に与えるフードの量

 

パッケージにはカロリーが記載されています。少々面倒かもしれませんが、目分量ではなくちゃんと量るようにしましょう。

 

そして代謝を上げることも大切です。猫にとって最もエネルギー源となる栄養素は脂質です。しかし市販のダイエットフードには脂質を減らし、消化に不向きな穀物でかさ増ししてカロリーを抑えているものもあります。こうしたキャットフードは栄養価が低く消化に悪いため、慢性的な栄養不足の原因となります。栄養がスカスカなので満足感が得られず、結果的に食べ過ぎてしまうという悪循環を生み出すのです。

 

ダイエット専用にこだわる必要はありません。むしろ高脂質で高タンパク質のフードの方が消化吸収に良く、過食も防いで基礎代謝を高めることができます。ダイエットにおすすめのキャットフードランキングでは高タンパク質かつ適切な給与量でカロリーが抑えられている商品を厳選して紹介しています。

 

また水分の多いウェットフードは満腹感を得やすいので、ドライフードよりもおすすめです。値段は高くなりますが、ウェット(缶詰・パウチ)キャットフードおすすめランキングでは総合栄養食のウェットフードを厳選して紹介しています。

 

 

給餌の工夫と運動でストレスを乗り切ろう

決まった時間に食べさせることも重要です。排泄のタイミングも揃うようになるので、食べる量と排泄物の確認が同時にできて健康管理しやすくなります。20分以上経っても食べなければ「もういらない」のサインですので下げてしまいましょう。よく食べる猫は間食が減り、食が細い猫はそのタイミングで食べるようになります。

 

多頭飼いで困るのが、他の猫のエサを横取りする肥満猫の存在です。食べ終わるまで傍で見張るのが一番ですが、それが難しいなら横取り猫だけ別室で食べさせます。仕切りを用意したり、キャリーやケージを利用するのもおすすめです。

 

1匹飼いであれば、小さなお皿にフードを少し入れたものを部屋のあちこちに隠しておくのも一つの手段です。ペットボトルに穴をあけてフードを入れれば、遊びながらにしてダイエットできる玩具になります。

 

また適度な運動も欠かせません。ダイエット中のストレス軽減と、空腹感を紛らわせるためにも積極的に遊んであげましょう。太り過ぎの猫は1回2~3分を目安にします。理想は1日に3回ですが、短くてもいいので毎日継続するのがポイントです。とくに上下運動がカロリー消費に効果的ですので、家具で高低差をつくったり意識的にジャンプさせましょう。

 

 

焦りは禁物!猫のダイエットは長期戦

ただし絶食などの急激なダイエットは大変危険です。燃焼させる筋肉が落ちて太りやすくなるだけでなく、肝機能に重篤な障害を起こしやすくなります。減量ペースは週に体重の1%ほど、半年以上かけて実現させる覚悟を持ちましょう。

 

また成長期の子猫や、7歳以上のシニア猫の減量も要注意です。栄養素が不足したり、持病を悪化させる可能性があるため、独自の判断はやめましょう。基本的にダイエットさせるのは健康な成猫のみです。減量せざるを得ない場合は必ず獣医師の指示を仰いでください。

 

ダイエットを成功させるため、家族との共通認識も不可欠です。「ほんのちょっとなら……」と気持ちが揺らぐでしょうが、猫は「たくさん鳴いたから貰えた!」と考えます。どんなに鳴いても反応せず、猫が静かなときに与えるようにします。キャットフードや人間の食べ物は厳重に保管し、要求鳴きに対しては徹底的に無視しましょう。

 

ダイエット中は猫も人も苦難の連続です。人間以上に長期戦になるため心が折れてしまいそうになるかもしれませんが、絶対に挫けてはいけません。なぜならあなたが保護者だからです。愛猫と二人三脚で、じっくり焦らず時間をかけて臨んでくださいね。

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尿路結石
猫の尿が酸性またはアルカリ性になると結石ができるのが尿路結石です。膀胱や尿道を傷つけるだけでなく、尿道閉塞になって死に至る危険性もあります。pHコントロール系のキャットフードや水を与えることで改善します。
便秘
水をあまり飲まない猫は便秘になりやすい傾向があります。食物繊維が豊富に含まれている毛玉ケア用キャットフードを与えたり、ブラッシングをすることで便秘の予防になります。
腎臓病
猫は人間ほど腎臓が強くないので、高齢になると腎不全などの病気を発症しやすいです。腎臓病になった場合は獣医師の指示のもとロイヤルカナンやプリスクリプション・ダイエットなどの療法食を与えましょう。
毛玉
猫はグルーミング(毛づくろい)をすることで毎日一定の毛が胃の中に入り込みます。少量であれば糞とともに排泄されますが、量が多すぎると吐き出していまします。そのため毛玉ケア(ヘアボール)コントロールキャットフードがあります。
吐く
猫が吐く原因の多くは毛玉ですが、キャットフードの成分にアレルギー反応を示したり、餌の切り替えがうまくいかなかった可能性もあります。しかし重大な病気の危険性もあるので、症状によっては獣医師に相談することも考えましょう。
膀胱炎
猫の膀胱炎は感染、尿路結石が主な原因です。突発性膀胱炎もあり、ストレスや肥満、キャットフードが原因となる場合もあります。再発予防のために、クランベリーやオメガ3脂肪酸などが入っていてpHコントールに優れたキャットフードがおすすめです。
デンタルケア
飼い猫の多くが患っている歯周病は、口臭や嘔吐などの症状を伴います。悪化すると心臓や肝臓、腎臓などにも障害がでます。猫の歯周病予防には定期的な歯磨きやデンタルケアキャットフードが効果的です。また毎日のチェックを欠かさないことも大事です。
避妊
雌猫は生殖器を維持と発情の過程において多大なエネルギーを消費します。そのため避妊手術を施すと、同じ量のキャットフードを与えていても太りやすくなります。肥満にさせないために、低脂質・低カロリーのキャットフードを選び、運動をさせることが大事です。
抜け毛
猫は3月と11月に換毛期が来るので、毛づくろいによって毛玉がたまりやすくなります。その結果、食欲不振や吐き気、下痢、便秘、呼吸困難になることもあります。毛玉ケア用キャットフードは食物繊維が豊富ですが、フードだけに頼らず毎日のブラッシングも大事です。
フケ
猫のフケ対策は毎日のブラッシングが効果的です。お風呂に入れたらしっかり乾燥させることが大事です。フケ対策のキャットフードはオリジンとFORZA10です。症状が重い時は動物病院に連れて行きましょう。
妊娠
妊娠中の猫は通常の1.5倍程度のカロリー摂取が理想的です。タンパク質、カルシウム、ビタミンが豊富に含まれる妊娠中におすすめのキャットフードを紹介します。
体臭
猫の体臭の原因とキャットフードでできる対策をまとめました。副産物やミールなどキャットフードに含まれる脂質やたんぱく質の品質が悪いと体臭がきつくなることがあります。また病気や体調不良のサインである可能性もあるので飼い猫の健康チェックは大事です。
癌細胞は日々つくられ、免疫細胞によってその都度撃退されています。しかし加齢やストレスなどが原因で悪性腫瘍へと成長します。重要なのは免疫力を高めることです。基本的な栄養知識をもっておけば、キャットフードで飼い猫の癌の発生や増殖抑制が期待できます。
下痢
猫が下痢をする原因をまとめています。また動物病院で原因が特定できない場合のおすすめの療法食を紹介しています。下痢は猫の体の異常を知らせる緊急サインなのでしっかりと対応しましょう。
アレルギー
猫が食物アレルギーを発症する原因を解説し、アレルギー対策できるキャットフードの選び方、おすすめブランドを紹介します。ただし、生体によりアレルギー物質は異なるので、反応が出たらまずは病院へ連れていくことが大切です。
血便
猫の血便は大きな病気が影響していることもあるため、発見したら診察は必須です。しかし中にはキャットフードが関係している場合もあり、食事内容を見直すことで改善できるかもしれません。血便の知識を深めたうえで、キャットフードでケアする方法を把握しましょう。
軟便
飼い猫が軟便になった時のキャットフード選びのポイントをまとめました。軟便のパターンや原因、キャットフード選びのポイントも紹介します。