粗灰分と粗繊維を理解してキャットフードの保証分析値を読み解く

キャットフードのパッケージ裏に記載されている「保証分析値」を一度は目にしたことがあるかと思います。しかし実際のところ何をどう見ればいいのか分かりにくいものです。「粗たんぱく質」や「粗脂肪」などの「粗」もよく分からないし、「粗灰分」なる正体不明の成分まであり、謎は深まるばかりです。

 

いつもはスルーしがちな「保証分析値」ですが、意味が分かるとキャットフードの選び方が変わるかもしれません!

 

 

ペットフードの在り方が分かりにくさの要因

「ペットフード安全法」により、粗たんぱく質、粗脂肪、粗灰分、粗繊維、水、の5項目が表示義務化されています。「粗」と書かれていると「粗い」や「粗末」などマイナスイメージを連想しますが、けして質が悪いというわけではありません。実は「他の成分も微量に含まれている」という意味で使われています。

 

人間用の食品とペットフードの分析方法はぼ同じで、その成分内容も変わりません。しかし栄養価の標準値を表示しているに過ぎないので、食品では「粗」を省略しています。栄養成分の分析数値を保証するから「保証分析値」なのです。

 

手作り食であれば話は別ですが、犬や猫などはペットフードからしか必須栄養素を摂取できません。そのため一定の栄養成分を提供する必要があり、分析の精度を「粗」と表すことで栄養素の量を示しています。

 

「以上」や「以下」という不明瞭な表記にも理由があります。粗タンパク質や粗脂質は重要なエネルギー源となることから、最低限の含有量を保証するという意味で「以上」を用いて表現しています。摂取量の増加により健康に影響を及ぼす可能性のある粗灰分と粗繊維は、「以下」を用いることで最大含有量を示します。また栄養バランスの管理をしやすくするため、「%」や「mg」「IU/kg」といった単位で表記しているのです。

 

 

謎多き粗灰分と要注意の粗繊維

5種類の栄養成分のうち、粗タンパク質、粗脂肪、水は何となく想像がつきますが、イマイチよく分からない存在が粗灰分ではないでしょうか。そもそも灰分とは、食品を燃やしたときに灰として残ったミネラル分のことです。

 

100種類以上あるミネラルの中で猫の必須ミネラルは12種類あり、カルシウム、リン、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、クロールの6種類が主要ミネラルです。1日に100mg以上必要な主要ミネラルに対し、必要量が100mg以下の微量ミネラルは、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ヨウ素、セレニウムの6種類です。これらのミネラルと酸化物が合わさったものが粗灰分となります。

 

粗繊維は酸とアルカリで抽出後に残った不溶性食物繊維のことで、その名の通り繊維に間違いはありません。しかしこの点に注意が必要です。一般的に便通を良くすることで知られている繊維質ですが、粗繊維には便を増やして固くする働きがあります。摂りすぎると胃腸への負担が大きくなるため、便秘や下痢の原因になるケースもあるのです。ダイエットや毛玉対策のキャットフードのかさ増しに用いられることも多く、粗繊維の含有率が高いほど栄養価は低いとされています。

 

 

数値は目安にして品質を重視

栄養成分の割合だけでキャットフードを選ぶのは大変危険です。たしかに高タンパク質で高脂肪の食事は、肉食の猫にとって理想的です。しかし粗タンパク質には動物性だけでなく植物性のものも含まれます。

 

体内生成することのできない必須アミノ酸は、動物性タンパク質に豊富に含まれていますが、植物性にはそれがなく消化吸収率も悪くなります。そして安価なフードはコストを下げるため、植物性タンパク質の比率を増やしているものが多いのです。

 

動物性タンパク質をたくさん使っているから、といっても安心はできません。ミートミールなど低質な材料で数値だけを上げていれば、かえって体調を崩すことに繋がります。

 

保証分析値は、療法食を選ぶときの目安としては大変有効です。腎不全であればタンパク質の摂取量を減らす食事療法が主流となるため、粗タンパク質が少ないものを選びます。また膀胱炎や結石などの下部尿路疾患は、粗灰分の少ない低ミネラルのフードで治療していきます。

 

しかしこれらの食事療法も、良質な原材料で作られていることが前提です。保証分析値の数値を参考にしながらも、品質を重視したキャットフード選びをオススメします。

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副産物
キャットフードに含まれる副産物は人間が食べられない骨や内臓などです。ミールやエキスなどは羽、毛、皮、くちばちし等をすりつぶしたり、粉末状にしてあります。全てが危険という訳ではありませんが、原材料はしっかり確認することが愛猫の健康に大事です。
増粘多糖類
増粘多糖類は食品の粘り気を増すための添加物で、ウェットフードに多く含まれています。天然成分で作られているものは健康被害がないと考えて問題ありませんが、人工的に作っているメーカーもあるので原材料チェックは大事です。
リン
猫がキャットフードでリンを過剰に摂取すると腎臓病(腎不全)になるリスクが高まります。またカルシウムとのバランスが崩れることで尿路結石になる可能性もあります。しかしリンは必要な成分なので、バランスのよいキャットフード選びが大事です。
ナトリウム
猫にとって塩分は大切な栄養源ですが、ナトリウムのとりすぎは腎臓病や高血圧などのリスクがあります。ナトリウム不足になると食欲不振や発育の遅れなどがあります。1日の塩分の量を適切に守ることで健康維持ができます。
タウリン
キャットフードに含まれるタウリンは猫に必要不可欠な成分です。猫はタウリンを体内で生成できないのでキャットフードから摂取しなければなりません。タウリンが足りないと様々な病気を併発するので注意が必要です。
エトキシキン
キャットフードに含まれるエトキシキンは猫にとって危険な添加物です。ペットの食糧への添加は許可されているものの、犬や猫の癌の一因になっている可能性があります。エトキシキンが添加されていない安全なキャットフードを飼い猫に与えることをおすすめします。
ゼオライト
キャットフードに含まれるゼオライトの効果と、ゼオライトが配合されているキャットフードの紹介をしています。ゼオライトは食品添加物として認可されています。猫用としては腎臓ケアとして療法食に使用されています。副作用はありませんが、与えすぎは禁物です。
トウモロコシ
トウモロコシは安価で満腹感が得られるのでキャットフードに含まれることが多いです。コーングルテンなども同じです。トウモロコシは穀物アレルギー、下痢や嘔吐の原因になる可能性があるので、飼い猫の状況をよく考えてキャットフードを与えることが大事です。
ラム肉
ラム肉栄養バランスが良く、脂肪燃焼や脂肪燃焼や抗酸化作用があります。そのためラム肉を主原材料としたキャットフードは肥満気味の猫にお勧めです。ただ一般的なキャットフードよりも高額になります。
馬肉
馬肉はカルシウム、鉄分、ビタミン類が豊富に含まれており、低カロリー高たんぱく質なので猫の餌として優れた食材です。通販で購入できる馬肉入りのおすすめキャットフードや、飼い猫に与える際の注意点をまとめました。
乳酸菌
乳酸菌が猫の慢性腎不全や腎臓病に効果的とされるメカニズムを解説します。また乳酸菌配合のキャットフードからおすすめのブランドを紹介します。
野菜
猫に食べさせるキャットフードと野菜の関係を解説しています。猫は肉食なので野菜を食べる必要はありません。逆に下痢になったり、危険な植物もあります。基本的には猫に総合栄養食を与えていれば大丈夫です。
肉と魚どっちが好き?
猫は魚が好きというイメージがありますが、本来は陸上に生息する肉食動物なので肉を食べる必要があります。肉と魚の栄養素をいいとこどりしたおすすめのキャットフードを紹介するほか、肉を与える際の注意点もまとめました。