乳酸菌配合キャットフードと猫の慢性腎不全や腎臓病との関係

体の機能上、腎臓に負担がかかりやすい猫にとって、慢性腎不全に罹るのは宿命とも言われています。腎臓は一度壊れてしまうと回復しないため、発症後は完治しません。最近では新薬の研究も随分進みましたが、実用化までの道のりは長くなりそうです。

 

しかし、仕方がないことと悲観的になる必要はありません。東北大学大学院が行った実験によれば、便秘症の治療薬を投与したマウスに、慢性腎不全の進行抑制が見られたと報告されています。腸内環境を改善させたことで尿毒素が排出されやすくなり、結果的に病気の進行を遅らせたということです。ちょっと意外に思えるかもしれませんが、慢性腎不全と立ち向かうヒントは腸にあるようです。

 

腸内環境を整えるには、善玉菌を増やすことが第一です。食事や運動など様々な方法がありますが、最も効率的なのはキャットフードで乳酸菌を摂取することです。ヨーグルトなどでお馴染みの乳酸菌ですが、調べるほどに奥深い性質をもっていることが分かりました。

 

今回は腸と腎臓の関係性や、乳酸菌配合のキャットフードを取り挙げつつ、乳酸菌の優れた効果についてお話していきたいと思います。

 

 

腸内環境が腎臓に影響する仕組み

砂漠で生活するリビアヤマネコを祖先にもつ猫は飲水量が少なく、水分を有効活用するために尿を濃縮して排泄します。猫が腎臓病に罹りやすい理由は明確になっていませんが、濃い尿を生成するときにネフロンが破損されるため、とも言われています。

 

ネフロンとは、フィルターの役割を果たす「糸球体」と、必要な成分を再吸収する「尿細管」からなる構造体のことで、腎機能の単位としても用いられます。猫は元々ネフロンの数が少なく、タンパク質の摂取量が多いことから腎臓に負担がかかりやすい動物です。ネフロンの機能が低下するにつれて毒素が蓄積し、全体のうち約70%が破壊されたとき、初めて症状が現れます。

 

濾過しきれなかった尿素窒素やクレアチニンなどの老廃物が腸に辿り着くと、本来は腸で吸収されるはずの栄養や酸素を充分に摂り入れることができず、腸の動きが低下して便秘を発症しやすくなります。便秘が慢性化すると、増加した悪玉菌がアンモニアなどの有害物質をつくり、さらに腎臓に負担がかかるという悪循環に陥ります。実際に、多くの透析患者が便秘に悩まされているそうです。

 

その一方で善玉菌が優勢に立つと、悪玉菌を抑制する短鎖脂肪酸の生成やアミノ酸の代謝など、腎臓にとってプラスとなる働きをします。善玉菌や悪玉菌などの腸内細菌と腎臓はお互いに影響を及ぼし合い、この作用を「腸腎連関」と言います。腸内環境の改善が腎臓病の進行抑制に繋がるとされる根拠は、こうした体がもつ機能によるものなのです。

 

 

2つの乳酸菌が持つそれぞれの特徴

乳酸菌とは、糖類を分解して乳酸をつくる細菌のことです。善玉菌の仲間でもあり、生成された乳酸には腸内を弱酸性に保つことで、悪玉菌の増殖を抑制する働きがあります。大きく分けて2種類あり、ヤギや牛などの乳に含まれる乳糖を発酵させる「動物性乳酸菌」と、野菜や穀物に含まれるブドウ糖などを発酵させる「植物性乳酸菌」に分かれます。

 

動物性乳酸菌は代表的なものに、チーズやヨーグルトなどが挙げられます。非常にデリケートな菌で、栄養価が高い環境でしか増殖できません。そのうえ熱や酸にも弱いため、胃酸や胆汁酸によって分解されてしまいます。それに対して、醤油やぬか漬けなどに代表される植物性乳酸菌は、過酷な条件下にも耐えることができるので、生きたまま腸に到達します。

 

腸内に運ばれた植物性乳酸菌は、善玉菌を活性化させると同時に自らも悪玉菌を排除します。さらに乳酸菌がつくり出す乳酸の刺激によって腸の動きが促され、便秘や下痢といった症状が改善されます。このように生きて腸に届く乳酸菌や、それを含む食品のことを「プロバイオティクス」と言います。

 

胃酸で死滅した動物性乳酸菌にも役割があり、悪玉菌がつくる有害物質を中和させる作用を持っています。また死んだ乳酸菌は善玉菌の好物でもあり、善玉菌がその栄養源を摂取することを「プレバイオティクス」と言います。

 

それぞれ働き方は異なりますが、どちらも腸内環境を整えるために不可欠な乳酸菌です。近頃はプロバイオティクスとプレバイオティクス、この2つを同時に摂取する「シンバイオティクス」の考え方が広まっており、お互いに作用し合うことでより強力な乳酸菌効果を得られるようになりました。

 

 

乳酸菌配合のお勧めキャットフード

乳酸菌を配合したキャットフードを利用すれば、日常的に腸内環境をケアすることができます。今回は数あるフードの中から3種類ご紹介します。いずれも乳酸菌だけでなく、栄養源となる食物繊維などを組み合わせることで、シンバイオティクスを意識した内容となっています。

 

腸内環境の改善は腎不全を未然に防ぐだけでなく、様々な病気に打ち勝つ強い体づくりにも繋がるため、若いうちから乳酸菌を活用しておくことがお勧めです。

 

①WYSONG(ワイソン) バイタリティー 成猫用

「野性本来の食生活」をコンセプトに、獣医学博士が開発した自然派ドライフードです。ヒューマングレード且つ有機栽培の食材を使用し、製造から出荷まで自社で管理することで高い安全性を実現しています。ライフスタイルに合わせた商品展開になっており、このフードは9ヶ月以上の成猫用です。

 

新鮮なチキンを主原料にしているので、上質の動物性たんぱく質を摂ることができるのが特徴です。油脂に関しても植物由来の酸化防止剤が使われており、安心して与えることができます。乳酸菌だけでなく消化を助ける酵素も配合することで、より効率的に腸内環境を活性化させます。

 

2.27kgの大袋サイズのみの販売なので、開封後の保管方法は工夫する必要がありそうです。また便を固めるビートパルプが含まれており、体質によっては便秘や下痢を悪化させる可能性があるため、その点に注意しましょう。

 

  • 原材料
  • :鶏、鶏肉ミール、フィッシュミール、ターキーミール、玄米、えんどう豆、鶏脂肪 (ミックストコフェロールで保存)、亜麻仁、 ビートパルプ、卵、モンモリロナイトクレイ、カニ肉粉、ゴマ種子、チキン・フィッシュのナチュラルフレーバー、乳清、 ミネラル塩、カルシウム・プロピオン酸塩、 トマトポマス、カルシウム・プロピオン酸塩、タウリン、有機大麦若葉の粉末、ブルーベリー、海草、ヨーグルト、クエン酸, アップルペクチン、フィッシュオイル、イースト抽出物、ミックストコフェロール、 ローズマリーエキス、チコリ根、植物繊維、イースト培養物、 にんじん、セロリ、ビート、パセリ、レタス、クレソン、ほうれんそう、 ミネラル類(塩化カリウム、鉄蛋白化合物、亜鉛蛋白化合物、硫酸亜鉛、硫酸マンガン、マンガン蛋白化合物、硫酸銅、 銅蛋白化合物、亜セレン酸ナトリウム、ヨウ素酸カルシウム.)、 ビタミン類 (アスコルビン酸(ビタミンC源)、ナイアシン、ビタミンE、ビタミンA、チアミン硝酸塩、塩酸ピリドキシン、 パントテン酸カルシウム、リボフラビン、ビオチン、ビタミンB12、ビタミンD3、葉酸、メナジオン・ナトリウム重亜硫酸塩複合体(ビタミンK活性源) 、 乾燥バチルス・ リケニフォルミス発酵産物、乾燥麹菌発酵産物、乾燥黒麹菌発酵産物、 乾燥発フェシウム乳酸菌発酵産物、 乾燥乳酸桿菌発酵産物、乾燥アシドフィルス乳酸菌発酵産物, 乾燥枯草菌発酵産物, 乾燥乳酸菌プランタラム発酵産物、 乾燥ラクティス乳酸菌発酵産物、ペッパー

  • 成分
  • 水分10%以下、粗タンパク質36%以上、粗脂肪16%以上、粗繊維5.5%以下、粗灰分10%以下、リン1.4%以上、カルシウム2.2&以上、マグネシウム0.1%、タウリン0.2%以上

  • カロリー
  • 386kcal / 100g

  • 内容量
  • 2.27kg

  • 原産国
  • アメリカ

 

 

②FINEPET’S(ファインペッツ)

原材料やレシピ、品質管理など、全てにおいて世界トップレベルを掲げるドライフードです。カナダTLCペットフーズ社製品の輸入販売を行っていた株式会社エヴリワンズが、2013年に立ち上げた国産ブランドです。公式サイトでのみ購入可能ですが、初回は現品をお試し価格で利用できるので、愛猫との相性が心配なときにも好都合です。

 

アヒルやニシンなど肉魚類をたくさん使っているため、消化吸収率は87%と非常に高くなっています。また合成添加物が不使用なだけでなく、残留農薬や遺伝子組み換え飼料など、材料レベルで品質に配慮しているのです。熱に弱い乳酸菌はオーブンベイク後に添加しているので、栄養価を損なうことなく摂取できます。猫の体に負担がかからないようにつくられており、年齢やステージ関係なく与えることができるところも魅力でしょう。

 

  • 原材料
  • アヒル肉、ニシン、全粒米、ポテト、鶏脂、フレッシュサーモンオイル、鶏肉、チコリ、グリーンピース、鶏レバー、植物性繊維質(豆類由来)、ビタミン(ビタミンE、ビタミンC、ナイアシン、イノシトール、ビタミンA、チアミン、Dパントテン酸カルシウム、ピリドキシン、リボフラビン、ビタミンK、ベータカロチン、ビタミンD3、葉酸、ビオチン、ビタミンB12)、ミネラル(亜鉛、鉄、銅、マンガン、ヨウ素酸カルシウム)、ユッカシジゲラ、マンガンオリゴ糖、ボリジオイル、フラックスシード、Lカルニチン、イヌリン、プロバイオティクス

  • 成分
  • 水分8%、粗タンパク質32%、粗脂肪20%、粗繊維2.3%、灰分8%、カルシウム0.7%、リン分0.68%、銅分5mg/kg、亜鉛150mg/kg

  • カロリー
  • 427.2kcal / 100g

  • 内容量
  • 1kg

  • 原産国
  • オランダ

 

③LOTUS(ロータス) アダルト チキンレシピ

一見キャットフードとは思えない程お洒落なパッケージのロータスは、ペットフード先進国として有名なカナダ産のドライフードです。キトン、アダルト、ローファットの3タイプあり、栄養素が破壊されにくいオーブンベイク製法でじっくり焼き上げています。

 

本来であれば危険とされる「ミール」ですが、ここで使用されているチキンミールには副産物が入っていません。ヒューマングレード以上の食材や、植物由来の保存料を使うなど、高品質の原材料でつくられているのです。さらにカセイ菌などの乳酸菌と、チコリ根などの食物繊維との相乗作用により、シンバイオティクスの効果が狙えます。

 

容量は300gのみの販売で、開封後すぐに食べきれる量です。その分割高になってしまうため、フード消費量の多い家庭では手が出にくいというデメリット面もあります。
>>ロータスの評判と口コミ

 

  • 原材料
  • チキン、チキンミール、挽き割り玄米、挽き割り大麦、鶏レバー、エンドウ豆繊維、鶏脂(酸化防止剤としてミックストコフェロール天然ビタミンE、クエン酸)、乾燥ビール酵母、天然チキンフレーバー、乾燥全卵、オイルブレンド(大豆オイル、オリーブオイル、サーモンオイル、酸化防止剤としてミックストコフェロール天然ビタミンE、クエン酸)、かぼちゃ、りんご、さつまいも、人参、ほうれん草、ブルーベリー、乾燥クランベリー、はまぐり、挽き割りフラックスシード、炭酸カルシウム、海塩、塩化カリウム、タウリン、緑イ貝、チコリ根、ユッカエキス、乾燥ケルプ(海草)、ビタミンC、ビタミンE、硫酸鉄、DL-メチオニン、プロピオン酸亜鉛、酸化亜鉛、マンガンアミノ酸キレート、ナイアシン、銅アミノ酸キレート、葉酸、ビタミンB12、硫酸銅、マンガン酸化物、ビタミンA、ナトリウム亜セレン酸塩、チアミンモノニトレイト(ビタミンB1)、カルシウムパントテン酸塩、リボフラビン(ビタミンB2)、塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)、ビオチン、ビタミンD3、カルシウムヨウ素酸塩、アシドフィルス菌、ラクティス菌、カセイ菌、ローズマリーエキス

  • 成分
  • 水分10%以下、粗タンパク質35%以上、粗脂肪19%以上、粗繊維3.5%以下、粗灰分7%以下、タウリン0.2%以下、カルシウム1.61%、リン1.25%、マグネシウム0.13%、

  • カロリー
  • 382.5kcal / 100g

  • 内容量
  • 300g

  • 原産国
  • カナダ

 

 

若い頃からの腸内ケアが健康のカギ

腎機能がすでに低下している場合は、リンやマグネシウムが制限された療法食を与える必要があるため、サプリメントを活用するといいでしょう。ただし人間用として販売されているサプリメントには、乳酸菌以外の余計な成分が添加されているものがあります。必ず動物用のサプリメントを選んでください。

 

またキャットフードのパッケージに「乳酸菌配合」と記載されていても、必ず乳酸菌の効果が得られ訳ではありません。熱に強いタイプの乳酸菌が使われているのか、耐熱効果がないのであれば加熱後の添加かどうかが重要となります。乳酸菌の種類や加工方法が公式サイトなどで紹介されていない場合は、製造元に直接問い合せてみてください。

 

今回は乳酸菌を通じて、腎臓と腸内環境の相互関係について触れてきましたが、腎臓に限らず腸は体全体に影響を与え、健康そのものを左右する器官でもあります。もし愛猫が便秘や下痢を起こしやすい体質なら、乳酸菌で腸内環境を整えてあげることをお勧めします。年齢が若いうちから善玉菌を増やすことで、免疫力を高めて健康な体をつくることができるでしょう。

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副産物
キャットフードに含まれる副産物は人間が食べられない骨や内臓などです。ミールやエキスなどは羽、毛、皮、くちばちし等をすりつぶしたり、粉末状にしてあります。全てが危険という訳ではありませんが、原材料はしっかり確認することが愛猫の健康に大事です。
増粘多糖類
増粘多糖類は食品の粘り気を増すための添加物で、ウェットフードに多く含まれています。天然成分で作られているものは健康被害がないと考えて問題ありませんが、人工的に作っているメーカーもあるので原材料チェックは大事です。
リン
猫がキャットフードでリンを過剰に摂取すると腎臓病(腎不全)になるリスクが高まります。またカルシウムとのバランスが崩れることで尿路結石になる可能性もあります。しかしリンは必要な成分なので、バランスのよいキャットフード選びが大事です。
ナトリウム
猫にとって塩分は大切な栄養源ですが、ナトリウムのとりすぎは腎臓病や高血圧などのリスクがあります。ナトリウム不足になると食欲不振や発育の遅れなどがあります。1日の塩分の量を適切に守ることで健康維持ができます。
タウリン
キャットフードに含まれるタウリンは猫に必要不可欠な成分です。猫はタウリンを体内で生成できないのでキャットフードから摂取しなければなりません。タウリンが足りないと様々な病気を併発するので注意が必要です。
粗灰分と粗繊維
キャットフードの保証分析値にある粗灰分と粗繊維について解説します。祖灰分は食品を燃やしたときに灰として残ったミネラル分のことです。粗繊維は酸とアルカリで抽出後に残った不溶性食物繊維のことで、便を増やして固くする働きがあります。
エトキシキン
キャットフードに含まれるエトキシキンは猫にとって危険な添加物です。ペットの食糧への添加は許可されているものの、犬や猫の癌の一因になっている可能性があります。エトキシキンが添加されていない安全なキャットフードを飼い猫に与えることをおすすめします。
ゼオライト
キャットフードに含まれるゼオライトの効果と、ゼオライトが配合されているキャットフードの紹介をしています。ゼオライトは食品添加物として認可されています。猫用としては腎臓ケアとして療法食に使用されています。副作用はありませんが、与えすぎは禁物です。
トウモロコシ
トウモロコシは安価で満腹感が得られるのでキャットフードに含まれることが多いです。コーングルテンなども同じです。トウモロコシは穀物アレルギー、下痢や嘔吐の原因になる可能性があるので、飼い猫の状況をよく考えてキャットフードを与えることが大事です。
ラム肉
ラム肉栄養バランスが良く、脂肪燃焼や脂肪燃焼や抗酸化作用があります。そのためラム肉を主原材料としたキャットフードは肥満気味の猫にお勧めです。ただ一般的なキャットフードよりも高額になります。
馬肉
馬肉はカルシウム、鉄分、ビタミン類が豊富に含まれており、低カロリー高たんぱく質なので猫の餌として優れた食材です。通販で購入できる馬肉入りのおすすめキャットフードや、飼い猫に与える際の注意点をまとめました。
野菜
猫に食べさせるキャットフードと野菜の関係を解説しています。猫は肉食なので野菜を食べる必要はありません。逆に下痢になったり、危険な植物もあります。基本的には猫に総合栄養食を与えていれば大丈夫です。
肉と魚どっちが好き?
猫は魚が好きというイメージがありますが、本来は陸上に生息する肉食動物なので肉を食べる必要があります。肉と魚の栄養素をいいとこどりしたおすすめのキャットフードを紹介するほか、肉を与える際の注意点もまとめました。