猫にリンは必要か?代謝メカニズムを知って腎不全に備えよう

猫の祖先は水が少ない砂漠で暮らしていたため、尿を濃縮して体内の水分を有効に使っていました。それゆえ腎臓への負担が大きく、腎不全は猫の宿命とも言われるほど死因率の高い病気となっています。

 

慢性腎不全は初期症状がほとんどなく、腎機能のおよそ3/4以上を失ってようやく発症するので、気づいたときには重症化しているケースが非常に多いです。一度壊れてしまった腎臓は元には戻りません。進行を遅らせるためにはリンの制限が不可欠となります。

 

そもそもキャットフードに含まれているリンは、猫にとってどんな働きをするのでしょうか。今回は普段あまり意識することのないリンについて迫ってみたいと思います。調べていくうちに見えてきたのは、腎不全と歯周病の意外な関係性でした。

 

 

リンの過剰摂取が及ぼす影響

リンは必須ミネラルの一種で、カルシウムの次に多く体内に存在します。リンとカルシウムは結合すると、骨や歯をつくる「リン酸カルシウム」になります。残りは脳や神経、筋肉の機能を保ち、炭水化物や脂質の代謝のサポート、体液のph値を整えるなど、猫の健康を維持する上で重要な働きをします。

 

リンを1としたとき、カルシウムの比率は1.2?1.5が理想的と言われています。しかし肉類に豊富に含まれているリンは、どうしても過剰摂取になりやすいのです。精肉のリン含有量はカルシウムの10倍以上ですので、手作り食を与えている人は要注意です。

 

血中のリンとカルシウムの濃度バランスが崩れると「高リン血症」や「低カルシウム血症」を発症する可能性があります。さらに「副甲状腺(上皮小体)機能亢進症」を引き起こし、リンとの均等を維持するためにホルモンを分泌して、骨内のカルシウムを溶かし出します。生成スピードよりも破壊される方が速くなるため、骨が脆くなってしまうのです。

 

さらに進行すると、今度はカルシウム濃度が必要以上に高くなる「高カルシウム血症」になり、骨以外の場所にカルシウムとリンが結合して沈着する「異所性石灰化」になります。石灰化が進むと血管や全身の臓器を蝕み、沈着部位によって様々な障害をもたらすのです。これらの要因により、時間をかけて腎臓はじわじわと侵されていきます。

 

 

リンが不足するとどうなるの?

重篤な症状を誘発させるリンの過剰摂取ですが、不足してしまっても問題があります。血液中のph値が乱れることで食欲不振や体重減退、さらに骨軟化症、歯槽膿漏、発育不全、筋萎縮、溶血性貧血など、症状は千差万別です。中でも成長期は骨形成に影響するため、骨折しやすくなるケースもあります。

 

またカルシウムが余ってしまうと、シュウ酸と結びつき「シュウ酸カルシウム結石」をつくります。これに対し、リンが余るとマグネシウムが結合して「ストルトバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)」となります。同じ尿路結石でも原因がまったく異なるのです。結石ができる場所によって治療法も異なるため、注意が必要です。

 

腎障害が起きると悪者にされがちなリンですが、猫にとって必要な成分でもあります。腎不全を回避させたいがために、子猫のときから過度なリン制限をしても、それはそれで別の病気を招くことにもなります。何でもバランスが肝心ということなんですね。

 

 

歯周病は腎不全のバロメーター!?

リンの過剰摂取により骨が溶けることは既述のとおりですが、歯にも同じことが起きます。歯石の主成分はリン酸カルシウムであり、流出したカルシウムが唾液中のミネラル成分と結合して石灰化したものです。

 

人間では、腎機能低下とともに歯周病が増加する傾向が見られます。2014年にカリフォルニア大学が発表した研究結果によると、歯周病による慢性腎不全のリスクが4倍にもなることも明らかになっています。歯周病と慢性腎不全は双方向に関連し、歯周病菌が原因で腎不全になることもあります。腎不全を発症した猫の多くは歯に何かしらの問題を抱えていますが、歯周病だから腎不全になるのか、腎不全だから歯周病になるのか、真偽のほどは定かではありません。

 

しかし仮に猫にも同じことが言えるとすれば、歯の状態を確認することで、腎不全になりやすい体質かどうかを見極めることも可能になるのではないでしょうか。口腔環境は健康を左右するとも言われており、日常的に口の中を確認することは猫の将来にとってプラスになるでしょう。普段から口内チェックに慣らしておくといいですね。

 

 

キャットフード選びと私たちにできること

腎不全になると、主に食事療法と皮下輸液で対処しながら上手につき合っていかねばなりません。まだまだ健康だと思っていても、6歳を越えると発症率は一気に上がります。ひょっとしたら見えないところで潜伏しているかもしれません。

 

キャットフードのパッケージ裏には保証分析値が記載されているので、ぜひ確認してみてください。健康な老猫であれば、リンは0.9%以下のものを選ぶといいでしょう。記載が無い場合はメーカーに直接聞いてみるのもいいですね。対応次第で今後の購入を判断できますし、結果的にフード業界の向上にも繋がりますので、消費者である皆さんは色々問い合わせてみることをオススメします。

 

すでに腎不全を発症している場合は、専用の療法食を与えてください。シニア向けや腎臓への気遣いを謳っていても、実のところまったく配慮していないフードもたくさん出回っています。宣伝文句に騙されず、医師の指示を仰ぎながら適切なキャットフードを選びましょう。
>>キャットフードを適切に選択すれば腎臓ケアも可能になる

 

今のところ腎不全は完治が難しい病気です。だからといって諦めないでください。一昔前に比べてリンの吸着剤や療法食など、腎不全対策もバリエーション豊かになっています。私たち飼い主は、今できることを最大限してあげるべきです。

 



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